歯周病 全身疾患との関係

古くて新しい歯科疾患と全身の病気の関連 歯周医学


西洋の医聖ヒポクラテスの時代から口の病気が全身の健康に影響を与えることは指摘されてきました。近年、むし歯菌や歯周病菌が様々な病気になっている臓器で発見され、歯科疾患と全身疾患の関連性が科学的に証明されました。

最新の研究成果により歯周病の全身へ与える影響について多くのことがわかっています。歯周病の患者さんは、歯周病でない方に比べ致命的な心臓発作を起こす危険が約2.8倍、早産の確率が7.5倍高いということが報告されています。  

 

歯周病菌×動脈壁 =動脈硬化症

歯周病菌が動脈壁を傷つけると動脈硬化が進行します。


歯周病の進行
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歯周ポケットから血液中に歯周病菌が侵入(慢性的な菌血症状態)
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血管に歯周病菌が感染(慢性的な敗血症状態)
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歯周病菌、歯周病菌の産生した内毒素、サイトカインが血管壁に炎症を起こす
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動脈硬化の進行
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全身組織へ影響

 

口の中は多くの細菌が生息しており、特に歯についた歯垢は細菌の塊です。歯垢1mg中に約1~2億個の細菌や膿が含まれており、この歯垢が歯周病や虫歯を引き起こしています。我々はこれらの細菌塊を呼吸とともに飲み込んでいることになります。  

現在では口腔内を清潔に保つことにより、誤嚥性肺炎やインフルエンザなどの呼吸器疾患の予防や心筋梗塞や脳梗塞といった血栓をつくる疾患のリスクを軽減できることがわかってきました。

歯周病菌の全身への影響

  • 歯周病菌 × 動脈壁 = 動脈硬化症
  • 歯周病菌 × 肝臓  = 非アルコール性脂肪肝(NASH)

歯周病菌×肝臓= 非アルコール性脂肪肝(NASH)

非アルコール性脂肪肝(NASH)は、アルコールを飲んでいない人でも起こる脂肪性肝疾患の1つです。肝臓の脂肪変成が進み、脂肪肝から慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行していきます。このNASHにも歯周病が関係していることが分かってきました。歯周病菌は血流にのると免疫担当細胞の攻撃にあい、その数を減らしますが、数時間から10時間ほどは生き残り、肝臓にたどり着いた歯周病菌は脂肪で炎症を引き起こし肝臓にダメージを与えます。歯周病菌がNASHの進行を助けていることになります。

 非アルコール性脂肪性肝疾患患者は日本では1500万人ほどで、NASHの患者は300万人ほどとされています。NASHは食べ過ぎや脂肪を蓄える時間帯の食事(夜半の食事など)により生じる病気です。食生活にも注意が必要です。

歯周病菌×動脈壁=動脈硬化症 ⇒ 脳血管性認知症

脳血管性認知症は動脈硬化症により発症リスクがあがります。つまり、歯周病予防は脳血管性認知症の予防になります。
また、脳が委縮するアルツハイマー型認知症の進行度は残存歯数と関連があることがわかっています。
咀嚼により、脳血流量が増えることも知られており、歯と脳には関係があることがわかっています。


2024年02月21日