歯科とタバコ
タバコは新大陸からヨーロッパに伝わり、日本にはスペインなどとの交易の中伝わりました。以来、薬品や嗜好品として現在に至っています。
現在では医療界では喫煙はニコチン依存症として扱われ治療の対象となっています。
歯科・口腔領域では喫煙に関しては一利もなく、患者さんには禁煙をおすすめしています。
医学系学術団体27学会(2016年現在)で禁煙推進学術ネットワークなど禁煙に関する研究活動・啓蒙活動がおこなわています。歯科関係では日本口腔衛生学会、日本口腔外科学会、日本歯周病学会、ジャパンオーラルヘルスケア学会、日本口腔インプラント学会、日本有病者歯科医寮学会、日本口腔腫瘍学会が参加しています。

一次喫煙:喫煙者本人の主流煙の喫煙
二次喫煙:喫煙者の吐いた煙(呼出煙)と副流煙を第三者が吸う受動喫煙
例)喫煙者の周囲にいた人の空気
三次喫煙:タバコを消した後に排出される煙による汚染と残留成分による健康被害
例)喫煙所の残り香 発がん物質が含まれる
喫煙者人口
平成26年国民健康・栄養調査によると日本人の喫煙者は男性が32.2%、女性が8.5%で日本人の5人に1人が喫煙者です。推定男性1500万人、女性500万人の計2000万人が喫煙者と言われています。
タバコの成分と煙
タバコの煙には約4000種類の化学物質があり、その内約200種類が有害物質です。さらに約70種類が発がん物質であるといわれています。
タバコの煙中の有害物質
・一酸化炭素 …血行不良
・タール …歯に沈着するヤニ
・ニコチン …ニコチン依存症
・PM2.5(大きさ2.5μm以下の微小粒子状物質、70種類を超える有害物質を含む)

タバコの口腔内への影響
タバコの問題点
免疫力の低下:白血球の機能低下により歯周病菌への抵抗力が低下します。
血行不良:血管を収縮させ、栄養や免疫担当細胞の歯肉などの抹消への供給を阻害します。
治癒不全:歯肉の代謝に必要な線維芽細胞の分裂を阻害します。
歯周病のリスクファクター:歯と歯肉に間にある溝(歯肉溝、歯周ポケット)内を低酸素状態にしてしまうため、嫌気性菌である歯周病菌が増殖しやすい環境にします。
治療の選択肢を狭めます:喫煙者がインプラント治療を行うと高確率でインプラント体が定着せず、定着しても脱落します。(インプラント周囲炎)

喫煙関連性歯周炎:歯肉の血行不良が進行し、歯肉は線維化し硬く角化します。歯周免疫は低下し、歯周ポケットが深くなります。病態のわりに、血行不良のため出血しにくいことが特徴です。喫煙は歯周病の最大の危険因子です。口腔
粘膜の変化:口唇、口腔底、舌の裏、頬は薄くなり、硬口蓋や舌背は厚くなります。粘膜に傷がつきやすく、ニコチン性口内炎も生じます。
メラニン色素沈着:ビタミンCが消耗され、メラニン色素が粘膜で産生されるため歯茎や口唇が黒くなります。
(スモーカーズメラノーシス)
歯の着色:ヤニ(タールなど)の沈着により、歯が茶色くなります。
口臭:タバコの煙が肺にこびりつき、呼気がタバコ臭くなります。また、口腔内環境の劣化により歯周病臭が生じることもあります。嗅覚がタバコのにおいに順応することで、喫煙者本人は自分の呼気が気にならない場合が多いです。
口腔がん:喫煙者の口腔がん発生率は非喫煙者に比べ約7倍高く、死亡率は約4倍高いという報告があります。20年の禁煙により非喫煙者と同じ発症率になります。前がん症状である白板症も発生率があがります。
創傷治癒不全:傷が治りにくくなります。
むし歯:受動喫煙により子どものむし歯の発生率が2倍になるとの報告があります。風邪や中耳炎の発生率も上昇すると報告されています。
味覚障害:味覚や嗅覚は禁煙数日で回復してきます。
骨粗しょう症:喫煙により骨の血流量の低下、骨芽細胞の数の減少、カルシウムの吸収量の低下などにより、骨粗しょう症が進行します。顎骨にも影響が現れます
2型糖尿病:喫煙により2型糖尿病の発症リスクが1.4倍高くなります。糖尿病は歯周病と深い関連性がある病気です。
スモーカーズフェイス

肌:コラーゲン線維、弾性線維の合成力の低下、断絶により保湿力の低下、張りの減少が進み、しわが深くなり しみが増えます。
歯:黄ばんで、茶色くなります
歯茎:黒くなります