妊娠中の歯科治療
妊娠中期は安定期と言われ、通常の治療は可能です。基本的に外科処置は行いませんが、緊急性を要する場合には行います。その場合に産婦人科との連携が必要となります。妊娠1か月~5か月 妊娠初期 応急処置
妊娠5か月~8か月 妊娠中期 治療可能
妊娠8か月~出産 妊娠後期 応急処置
産後1か月 応急処置
産後1か月~ 治療可能
間食の増加と食嗜好の変化の影響
妊娠による胃の圧迫により間食が増えると口腔内の自浄作用が働くなり、口の中が酸性に偏り歯垢が増加します。結果として歯が溶けたり、歯周病になったりします。また、酸っぱいものがほしくなる場合が多く、これも歯を溶かす原因となります。ダラダラした飲食には注意が必要です。つわり(悪阻)の影響
つわりにより、歯ブラシを口の中に入れられない方もいらっしゃいます。うがいを足すなど口腔衛生状態に気をつかってください。また、つわりによる嘔吐によって胃酸が歯にかかり、歯が溶けることもあります。妊娠と歯周病
①妊娠により女性ホルモンであるプロゲステロンとエストロゲンの濃度が上昇します。そして妊娠12週から13週ごろには歯肉縁下の細菌叢の微生物構成が変化し、特に歯周病菌の1種であるP.i菌(プロボテラ・インテルメディア)が妊娠初期に比べて5倍に増えます。②妊娠5週~20週ごろにプロゲステロンの影響で、少量の歯垢や歯石により特徴的な歯肉炎が起こります。妊娠性歯肉炎です。きちんとプラークコントロールをしておけば防ぐことができます。
③妊娠中は免疫寛容の状態になるので、お口の中も免疫力が低下し、歯周病などにかかりやすくなります。
④中等度・重度の歯周炎のある人が妊娠した場合に低体重児(2500g未満)出産や早産の可能性が健康な妊婦の7.5倍であるとの報告もあります(米国ノースカロライナ大学・Offenbache教授 1996)。
早産・低体重児出産の原因
①喫煙(受動喫煙含む):ニコチンにより子宮が収縮し、胎児への酸素供給が止まります②歯周病 :歯肉炎・歯周炎→炎症性サイトカインの増加→プロスタグランディン分泌→子宮収縮→早産 ③過度な減量:十分な影響が胎児に行かなくなります