西洋の医聖ヒポクラテスの時代から口の病気が全身の健康に影響を与えることは指摘されてきました。近年、むし歯菌や歯周病菌が様々な病気になっている臓器で発見され、歯科疾患と全身疾患の関連性が科学的に証明さえてきました。
病気からの 歯科疾患への影響 |
歯科疾患からの 病気への影響 |
観血処置時の注意 | |
NASH | あり | 必要 | |
糖尿病 | あり | あり | 必要 |
慢性腎臓病 | 必要 | ||
金属アレルギー 掌蹠膿疱症など |
あり | あり | なし ※口内で金属を 削合する場合は必要 |
上顎大臼歯先端は上顎洞に飛び出していることが多く、上顎洞の炎症が歯に影響したり、歯の炎症が上顎洞に影響を及ぼしたりします。鼻の炎症が原因で上顎洞炎を生じた場合『鼻性上顎洞炎』、歯の炎症が原因で上顎洞炎を生じた場合を『歯性上顎洞炎』といいます。
抗生物質が無かった時代には、炎症が脳にまで及ぶ場合もあったといわれています。
『上顎洞とは』 副鼻腔の1つ。左右にあり、鼻腔とつながっている。 『副鼻腔』 副鼻腔は鼻腔とそれぞれつながってる。 蝶形骨洞 篩骨洞 前頭洞 上顎洞 |
口が
歯周病菌が心臓の内膜に付着すると心内膜炎を引き起こす場合があります。人工弁置換術を受けている方などは要注意です。抜歯やSRPなどの観血処置時に抗菌薬の術前投与が必要となる場合もあります。
唾液の量が減少すると、お口の中が変わってきます。むし歯の原因
非アルコール性脂肪肝(NASH)は、アルコールを飲んでいない人でも起こる脂肪性肝疾患の1つです。肝臓の脂肪変成が進み、脂肪肝から慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行していきます。このNASHにも歯周病が関係していることが分かってきました。歯周病菌は血流にのると免疫担当細胞の攻撃にあい、その数を減らしますが、数時間から10時間ほどは生き残り、肝臓にたどり着いた歯周病菌は脂肪で炎症を引き起こし肝臓にダメージを与えます。歯周病菌がNASHの進行を助けていることになります。
非アルコール性脂肪性肝疾患患者は日本では1500万人ほどで、NASHの患者は300万人ほどとされています。NASHは食べ過ぎや脂肪を蓄える時間帯の食事(夜半の食事など)により生じる病気です。食生活にも注意が必要です。
歯周病菌が動脈壁を傷つけると動脈硬化が進行します。
歯周病の進行 ↓ 歯周ポケットから血液中に歯周病菌が侵入(慢性的な菌血症状態) ↓ 血管に歯周病菌が感染(慢性的な敗血症状態) ↓ 歯周病菌、歯周病菌の産生した内毒素、サイトカインが血管壁に炎症を起こす ↓ 動脈硬化の進行 ↓ 全身組織へ影響 |
動脈硬化の結果、高血圧症が進行します。
慢性腎臓病(CKD)は、2008年の日本腎臓病学会の推計によると日本人成人の8人に1人にあたる1330万人が罹患しているとされています。その内600万人が治療をうけていないといわれています。
〈むし歯・歯周病の影響〉
血管中に
パージャー病はLeo Buergerによってはじめて報告された病気です。閉塞性血栓血管炎のことで四肢の抹消の血管に血栓がつまったり炎症を起こしたりする難病です。喫煙と歯周病の影響が報告されています。
脳血管性認知症は動脈硬化症により発症リスクがあがります。つまり、歯周病予防は脳血管性認知症の予防になります。
また、脳が委縮するアルツハイマー型認知症の進行度は残存歯数と関連があることがわかっています。
唾液
むし歯や歯牙欠損、歯列矯正など歯科治療ではレジン(樹脂)、金属、陶材といった人工材料を使用します。これらの材料は口腔内という過酷な環境で使用され、生体に絶えず接することになります。
現代は国民総アレルギー時代といってもよいほど、杉花粉やハウスダスト、食物など様々なアレルギー疾患にあふれています。金属アレルギーでは若い時からピアスをしている人が起こりやすいという報告もあります。
歯科金属でもパラジウムやコバルト、水銀などでアレルギーの報告があります。歯科金属で生じたアレルギーは足裏や手の平などで掌蹠膿疱症として現れる場合があります。
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